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マタニティウェアとカルチャーショック 1月 21日, 2010年 by 阿月まり

2月に某局の番組に出演することになり、少し打ち合わせのお話をさせて頂いたのだが、またも移住した頃のこと──マタニティ時代のエピソードが思い出されて、何とも言えず哀しい気持ちになった。

あれは2004年の冬のこと。

上の子を妊娠して、お腹が膨らみ始めた頃のことだ。

手持ちの下着では間に合わなくなり、そろそろマタニティ用のデカパンが欲しいと思って周りの人に聞いたところ、

「そんなものは見たこともないし、聞いたこともない。どこに売っているかも知らない。大きいサイズが欲しいなら、LLとか買えばいい」

と言われて、ブラックホールに吸い込まれたものだった。

当然、あると思っていたマタニティ用の下着。

いくら東欧の僻地でも……防寒下着さえ売っていない所でも……マタニティ用の下着ぐらいはあるだろうと信じ切っていただけに、これは痛烈なカウンターショックだった。

では、いったい、何を身につけろ、と。

あの、腹囲が90センチ以上にもなる妊娠後期を、ポーランドの妊婦さんはいったいどうやってしのいでいるのか、と。

大声で叫びたい気分だった。

その答えを知ったのは、9ヶ月になり、前駆陣痛が激しくなって2週間ほど入院した時のこと。

周りの妊婦さんは、大きめのTシャツドレスにスウェットパンツかショートパンツ(これもビックリ)、下着は大きめのビキニ、That’s all。

いくら初夏とはいえ、そんな薄着で、お腹を放りだして、妊娠中毒になるよ! と言いたくなるぐらい無防備というか、何というか。

あるいは、日本的な考えが過保護なのか、自分でも訳が分からないくらいショッキングな光景ではあった。

で。

I miss you、マタニティウェア&ハイテク・ベビー用品の私がしたことは、日本の通販でオーダーし、実家に海外転送してもらうこと。

やっと手に取った「臍までパンツ」の温もりと大きさを今でも忘れることはできない。

そう言えば、「腹帯」などという習慣もポーランドには無いんですよね。

検診で身につけていたら、「何、それ?」と言われる。

もはや視線は訝しげ。

私は相当甘やかされた某国の姫君に思われたに違いない。

まあ、そんな苦労も、今はどこへやら。

今でこそ笑って語れるエピソードの一つだが、今でもタンスの引き出しに大事に取っている「腹帯」──いつか娘に譲ろうと、願いを込めて取り置いているそれを見ると、つらかった時のことが生々しく思い出されて、涙がこみあげる。

こうして書いていても、人に話しても、「あの時の気持ち」は未だに癒されるものではない。

マタニティでナーバスになっていたところにカルチャーショックが重なったため、余計で精神的に堪えたのかもしれないが、自分が「正しい」と信じてきた価値観(この場合、『妊婦はお腹を冷やしてはいけない』という先祖代々の教え)、何処でも共通と思い込んでいた世界観(あって当然のマタニティウェア)、それらが木っ端微塵に砕ける心の体験は、自己喪失に近いものだったから。

「たかがマタニティウェアで何言ってんの」と思う人もあるだろうけど、カルチャーショックとはそういうものなのだ。

人によっては、「外国人夫のシャワーの使い方がヘン」というだけでストレスになるかもしれない。

人間の文化的なバックボーンは理屈で変えられるものではない。

それを理解しないと、やはり海外生活は難しいと思う。

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